野村 胡堂

 「銭形平次」の生みの親、作家・野村胡堂。


 「銭形平次捕物控」で代表される作家野村胡堂。

 

 新聞社に勤めていた昭和6年頃、文藝春秋社の編集長から「今度、新しい雑誌を出すので、『半七捕物帳』のようなものを書いてくれませんか」と依頼があった。そういうものなら書けるだろう、簡単に引き受けた。

 「歳のころなら三十ちょっと前の、目元のすずしい下町っ子が顔を見せる。口がしまって、権力に真っ向から向かっていきそうだ。これだ!この男だ。この男なら、ずっとうまが合いそうだ。平民の子だから平次でいこう。」

 名前だけじゃ弱いから上に何かつけなきゃいけない。思案していると、ガラス窓の向こうにビル工事の幕がかかっていて、銭高組とある。「これだ、銭形でいこう。」

 

 こうして生まれた小説『銭形平次捕物控』は、文藝春秋のオール讀物第一号から連載されました。その後、映画・テレビ化され、嵐寛寿郎、長谷川一夫、大川橋蔵、北大路欣也、村上弘明といった、名だたる俳優が「銭形平次」を演じています。

 

 『罪を憎んで、人を憎まず』をテーマとし、背景に江戸の風物詩を感じさせる作品は、人々の心に潤いをもたせました。

 

 ライフワークとなった『銭形平次捕物控』、胡堂もこれがまさか27年間もつづこうとは予想もしていなかったようです。

 『銭形平次捕物控』は、長短篇合せて383篇にもなりました。

 この他、胡堂は空想科学小説、少年少女小説等を執筆しており、創作した数はおよそ700篇におよびます。